豚インフルエンザ -所変われば・・・-
暑くなっている気候に体(と頭)が慣れないためか、先週に引き続き、今回の記事の切れ味は良いとは思えない。
あまり期待しないで読んで欲しい。
新聞報道によると、厚生労働省は豚インフルエンザが下火(←マスコミ報道が下火)になりつつあるのを待ったかのように、発熱外来の廃止など「体制の通常化」をはじめたようである。
素人から見て、現在の豚インフルエンザの毒性及び日本国内での流行状況を考えると、この判断自体はまっとうなものであるように思われる。
しかしながら、今回の国内対応の問題点や教訓の検討を国レベルにおいて、関係者(国、地方、医師、患者、学校など影響を受けたところ、そして、マスコミ報道)を集めて検討がなされているとは、新聞などを見る限りでは、聞いたことがない。
秋から冬にかけて、豚インフルエンザが再上陸することは、ほぼ確実であろう。その時に、どのような対策をとるべきなのか、今回の教訓を「他山の石」とするために残された期間はあまりない。
問題が生じるまでは何もしないという公衆予防の観念のない(他方、問題が生じた場合、マスコミがとりあげなければ無視、マスコミが騒げば過剰対応)厚生労働省らしいといえばそれだけであるが、ならば、やはり厚生労働省はつぶれたほうが世のためなのかもしれない。
ついでに言えば、今回のケースは、鳥インフルエンザが現実の問題となった場合のテストケースとしても大事なはずであるが。
などと思っていたら、ニューヨーク市保健精神衛生局の「H1N1 ’豚インフルエンザ’ : あなたが知るべきこと」という文書を見つけてしまった。
しかも、日本語訳のものまである。
日本語なので、とりあえず下記で全文をお読みいただくことをお勧めする。
http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/cd/h1n1_flu_basic_faq-ja.pdf
ちなみに、これは6月6日版であるので古い情報ではないかと思われる方もいるかもしれない。が、最新(6月26日)は下記のとおりである。ただし、英文であるし、内容も大差ないようであるが、慎重なタイプの方は確認されるとよい。
http://www.nyc.gov/html/doh/downloads/pdf/cd/h1n1_flu_faq.pdf
私なりに(←つまり、私にとって都合のよいように)抜粋してみると、
最初に「ニューヨークや全米においては、このウィルスによる症状は軽度です。症状を訴えた人たちは皆処方箋なしに回復しています」と端的に個人に対するリスクの低さを明示した上で、ワクチン(開発中)や予防法(うがい・手洗いなど)を簡単にわかりやすく説明している。
そして、いよいよ「インフルエンザの様な症状があった場合どうすればいいでしょうか?」に入る。
「咳、喉の痛み、そして熱があった場合は少なくとも1日、十分良くなるまで自宅で安静にしましょう。咳が続いているが他の症状はない場合は、 (英文では、”If you have one of the underlying medical conditions listed above, and you develop flu-like illness”となっているので、「咳が続き、かつ、下記の症状の一つがある場合は」というのが正しいようである) 医師の診察を受けましょう。病気になってから1週間ほど経過すれば、仕事や学校に戻ってもよいでしょう。軽い症状の場合は病院にいく必要はありません」とし、日本での騒動と比べると驚くべきことを告げたうえで
逆に、「どのような症状になったら病院にいくべきでしょうか?」として「もし症状がひどい場合や悪化している場合」や「下記のような兆候(呼吸困難又は息切れなどの具体的な例示あり)がある場合は治療を受けましょう」としている。
簡単にいえば、呼吸困難とか激しい嘔吐などを伴わない限り、病院に行く必要はなく、自宅で寝ていればよいということのようである。
日本の騒ぎ方と比べてギャップの大きさに驚くばかりである。
日本で感染者が見つかって国もマスコミも「大騒ぎ」しているときに、その本拠地である米国・カナダでは、比較的平静だったというのも、これだけ認識に差があるとうなづけるところである。
さらに言えば、普通の風邪ならば医者に行くより家で寝ているほうが良いときちんと考える人は少ないながらいるだろうが(問題はただの風邪と思っていたら別の病気だったというリスク)、インフルエンザならば病院に行ってタミフルなどを飲むのが当然とほとんどの人が(私も)思っている。
しかし、インフルエンザにしても一週間も家で休んでいればほとんどの方が治ってしまう。タミフルなどは一週間休むのを数日縮める効果しかない。(このような話は以前何かで見た記憶はあるが、ほとんど気にとめていなかった。)
逆にいえば、高齢者のようなハイリスク者や症状が激しい方を除けば、通常のインフルエンザについても、日本人は過剰対応をしているのかもしれない。
(その結果、日本でのタミフルの使用量は異常に大きく、これだけ(医療費)ならともかくタミフル耐性シンフルエンザ出現の早期化に貢献していることになる)
誤解されないように、別に米国のほうが優れているというつもりはない。
これらの裏側には、皆保険制度がなく、多くの保険未加入者がいるという「現実」があるはずである。
日本は、安い保険料(安いとは感じられないだろうが、国際的にみれば、極めて安いものであることは疑うことができない)しか負担せず、しかし、病院にかかる必要もないほどのことで「安心」のために利用することができるという「天国」である。(さすがに、天国も崩壊して地上に急降下中であるが)
このようなわが国では、タミフルなどを安易に使用しすぎて、耐性ウィルスの発言を早めるのではないかということを除けば、患者側からみれば、病院に行くに越したことはない。
しかしながら、本当に豚インフルエンザ(現在と同程度の弱毒性が維持されているとして)が一気に広がったら、ただでさえ崩壊しかかっている日本の医療体制が持つだろうか。
(といくら言っても、寝ているのが一番の薬の単なるカゼですら、緊急外来に行く現在の日本人に言っても、馬の耳に念仏だろうが)
さらに、真打ちの鳥インフルエンザが流行したらどうなるのだろうか。
豚インフルエンザすらも適切なリスク管理ができない厚生労働省にきちんと対応できるとは思えない。
自己防衛のためには、食料を備蓄して、家に立てこもるしかないかもしれない。(なにせ、ただでさえ白血球数が低いのだから。)
しかしながら、いつもながらわからないのは、日本のマスコミである。
少なくとも三大紙ならば米国に支局があるだろうし、共同通信もある。それがなくとも、ここに書いたこと程度はネットで簡単に手に入れることができる情報である。
日本と米国の対応のいずれが良いのかは別としても、このような対応もありえることをきちんと報道しないのは、なぜ、なのだろうか。
いくつか理由が考えられる。
国民をあおったほうが「売れ行き」が伸びるという「さもしさ」。
戦時中に、軍部(在郷軍人会)による不買運動をおそれて、軍部にしっぽを振った報道しかしなかった体質は健在のようである。
また、このようなことを報道して、千一、国内で患者が亡くなった(通常のインフルエンザと同じく千人に一人程度は死亡するらしい)時に、責められたくないという「逃げ」。
これまた、真実の報道よりも責任回避に重きを置くというマスコミの真の姿の発現である。
そもそも、マスコミは国内視野しかない井の中の蛙の集まりにすぎないということ。
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と、ここまで元気よく書いてきたのはいいが、このブログはがん患者のブログなのだった。
どのように日本とニューヨーク市の豚インフルエンザへの対応の違いをがん治療と結びつけようか・・・・
よく考えていくと、がん治療に関する問題と相似していることが含まれている。
一つには、「井の中の蛙」であるということである。
例えば、国内の治験データーがなければ、世界で広く使用されている抗がん剤ないしその適用を認めようとしない厚生労働省。
あるいは、国内の基礎研究段階の発表や、どうでもいいような発表はとりあげるものの、ASCOなど世界的な権威のある学会での発表については取り上げる気もないマスコミ。
二つには、その狭い井戸の中で騒ぎが起こると過剰に反応するが本質的な対応はしない体質。
未承認抗がん剤などで特定の薬について、患者が騒ぎ(これだけならば無視)、マスコミや国会でとりあげられると、民族差を確認するための治験ともいえないような少数治験だけで「迅速」承認をしてしまう。しかし、騒がれない他のものについては何もしないし、本当に国内治験が必要なのかなど根本的な問題には目をつぶる。
マスコミもこの点では厚生労働省と同じであり、熱しやすく冷めやすい。
三つとしては、国民の個人リスク過敏症
インフルエンザかもしれないと思うと、実際のリスク無視(豚インフルエンザのリスクの低さ、逆に、インフルエンザでなかったのに「発熱外来」で本当の患者から感染するリスク、さらには、発熱外来のパンクなどの社会リスク)して、個人リスクを心配してルール無視で発熱外来を「直接」受診。
そして、それを批判しようともしないマスコミ。
この体質は、逆に医療の副作用や治療リスクを許容しないということにもつながる。
社会リスクには鈍感であっても、個人リスクには過剰に反応する。
この延長線上に、いわゆる医療過誤訴訟があり、国内の医療制度の崩壊がある。
がん治療は患者にとって、個人リスクの塊である。
鈍感になってもいけないが、かといって過敏になりすぎてもマイナスである。
そう考えていくと、がんに効くという健康食品の愛用者は、個人リスクに過敏かつ鈍感なのだろう。
つまり、避けられないリスクに過敏に反応(=効果があるのに副作用がないという「言葉」を反射的に信用)し、他方、そのような夢物語を信じることの危険さに鈍感ということである。
四つ目には、それにもかかわらず病院依存体質。
治療の意味(例えば、タミフルの効果)も知ろうとせずに病院に行き、薬をもらいたがる。
さらにいえば、治療してもらって当然としか考えない。
もちろん、風邪(や重症ではないインフルエンザ)と異なり、がん治療は家で寝ていればよいというものではない。
病院・医師に頼らなければならない。
しかし、多くの患者は、病院に「頼りきり」であり、自分で可能な範囲の知識を持つ努力もしない。
ネットの掲示板で、よく「良い病院(医師)」を知らないかという書き込みを見るが、「○○という治療ができる病院」という書き込みはあまり見ない。
これも、お任せできる病院探しの表れなのだろう。
病院(医師)に頼ること自体は当然である。そして、普通よりも優れた治療を行う病院(医師)に頼ろうとするのも当たり前かもしれない。
しかし、普通以上の治療には、普通の治療以上のリスク(正確には不確実性)があるはずである。患者側が病院(医師)に任せきりで、このリスクを理解していないのならば、(私が医師であれば)怖くて普通以上の治療はしないというのは仕方がないこととも思えるがどうだろうか。
いずれにしても、今回の豚インフルエンザ「騒ぎ」の教訓が、この秋・冬の豚インフルエンザ第二波やいずれか発生する鳥インフルエンザに反映されることを望むが、そのようなことは、厚生労働省でもマスコミでも日本国民においても起こらないだろう。これは、残念ながら、がん患者となって、それなりの期間、日本の医療を見てきた私の実感である。




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