治療歴その9 エベロリムス(Everolimus: RAD001)+サンドスタチン(2008.10~2009.11)
10月最初の外来日、外来の最初にCTの読影レポートを示される。
前回と比較して、多発肝転移と肝内胆管拡張の程度は、おおむね変化ありません。門脈腫瘍栓もあまり変化ありません。
膵腫瘍と脾浸潤と左副腎転移は、前回よりも若干増大しています。
胸部、腹部、骨盤に新たな病変は認めず、明らかな転移所見は認めません。
Impression:若干増悪傾向
以下のやりとりを記憶により紹介(記憶ですから不正確です)。また、その裏の意味などを[]で補足。なお、これまでの治験結果(論文)は話されてといないが、お互いに知っていることはわかっている。
「微妙なんだよね。方針は二つ。このまま、テモダール+アバスチンを続けるか、エベロリムスにするか。」
[CTの結果は、無効になったと断言するには微妙。膵内分泌腫瘍は進行が遅いし、まだ、余裕もあるので、現状維持で様子見をするか、変更するか。]
「最近、骨髄が疲れているようですし、たしか、エベロリムスは骨髄に対する負担は低かったですよね。」と色気を示しつつ、
「しかし、最近、少し肝機能が気になっているんです。先週のK立がんセンターの血液検査では、治療に支障はない程度ですが、肝機能関係の検査値が正常値を超えていましてね。もっとも、その前後数日かなりだるかったので、一過性の胆管炎とは思いますが。」
[白血球及び血小板数が、徐々に低下傾向であり赤信号とはいわないが黄色点滅信号程度になったことから、先月のアバスチンはとりやめていた。このため骨髄抑制が少ないということは魅力であるが、他方、エベロリムスは肝機能に影響しやすいという情報はすでに主治医と共有していた。]
「(最近の血液検査結果を見ながら)たしかに、最近やや高めだけれど、多分、2mg/日でいくから大丈夫。もっとも、GOT,GPTが100くらいにはなるかもしれないが。」
「2mg/日ですか。10mg/日は多いとしても5mg/日程度かなと思っていましたが。」
[現在行われている国内治験は、欧米と同様に、10mg/日でスタートして、副作用によっては5mg/日に減量というもの。しかし、非公式情報では、国内では強い倦怠感のため、10mg/日で継続できている者は少ないらしい。2階に階段を上るのもきついという例もあるらしい。]
「実際のところ、5mg/日でも持たずに、隔日5mgという人もいるらしい。それならば、最初から2mg/日のほうを推奨する。継続できなければ意味がないから。」
[膵内分泌腫瘍の場合は、エベロリムスは効果が出ればかなりの長期間効果が継続することが多そうである。継続できなければ意味は低い。また、私は一応仕事を継続しているのでQOL(生活の質)への影響の大小は比較的重要。]
「(体格や肝臓の能力(薬物代謝)の差から)日本人は欧米人の7~8割が適量といわれていますし、薬による差があるにしても5割というところかと思っていたのですが。しかし、欧米の治験論文では副作用は強くないような印象をもったのですが・・・1/5ですか。」
「欧米人も10mg/日ではかなりしんどいのを論文はごまかしているのかもしれない。」
「他の抗がん剤と組み合わせるならば候補は?」
[量が1/5と少ないので、単剤でなく多剤ですかという趣旨]
「やるならば、ザノザールだけれど、2番手以降にしたいでしょう。」
「よく気持ちがわかりますね。」
「長い付き合いだからね。」
[たしかに、ピカピカの新薬を最初から多剤にする勇気は少ない。しかも、骨髄を休ませることができなくなる。]
「これまで何人ぐらいに使いましたか。」
「4人。そのほかに、K立がんセンター治験を受けている人が一人。」
[決して多いとは言えないが、といって、国内治験の人数と比べてみれば、少なすぎるということもない。]
「スーテント(Sutent)と比べてどうですか。また、やはりソラフェニブ(sorafenib)は劣りますか。」
「スーテントは効果の出る人には(膵内分泌腫瘍としては)著効が出ることもあるが、心臓への副作用の可能性もあるし、現時点では、エベロリムスのほうを優先したい。ソラフェニブはこれらよりも明らかに優先度が低い。」
[他の候補薬との比較を質問。エベロリムスとスーテントの優劣は難しいが、スーテントは切れ味がよい(こともあり得る)が副作用管理にも注意がいる。病状が追い込まれてもいない現状では「切れ味」より副作用のほうを重視。ソラフェニブは効果が劣り優先度低。]
結局、今回はまだテモダールが一回分(100mgX5)手元に残っているので、次回(10月下旬)から切り替えることになる。
なお、RAD001治験参加にトライしなかった理由は、「経済性(治験なら無料)や投与量が少なく効果がでない可能性」と「QOL低下(強い倦怠感により現在の生活(仕事を含む)や肝機能へのリスク(投与量の自由がない)」を私なりに比較した結果であり、これは人により様々であろう。
現時点で特に心配しているのは、
・ 投与量が低すぎて効果が出ない可能性
・ 肝機能への影響(多少の影響なら問題ないが)
・ QOLへの影響
というところである。もっとも、やってみなければわからないのだから「歩きながら考えよう」。
そもそも、テモダールは一年間(半年でも)くらい効果があって欲しいと思ってはじめたのでピッタリということなのかもしれない。
ちなみに、2mg/日の場合、月額で十数万円(数十万ではなく)の負担となる。


はじめまして。以前からブログ拝見させていただいております。いつも貴重な情報を有り難うございます。家族が卵巣カルチノイドから肝臓転移をし既に手術では不可能な状態です。PRRTも日本でオクトレオスキャンが無理とわかり詮索術も数が多すぎ化学療法を探しております。高齢な為あまり身体に負担のないものを考えておりますがこちらで拝見している特殊な種類の腫瘍について今かかっている病院では使用できないと回答を得ております。どのどうな病院に伺えばよいかわからずお教えいただければありがたいのですが
投稿: ポンコロチャン | 2009年6月 3日 (水) 05時19分
ボンコロチャン 様
まず、誤解されないように書かせていただきますが、これまでの私の治療は、決して「身体に負担のないもの」とは限りません。
現在、治療を受けているクリニックは、入院設備がないために外来治療可能な範囲にレジメンや薬量を調整して使っていますが、これとても個人によっては大きな副作用が出る可能性はあります。
また、欧米での治験をベースにしており、主治医も未承認抗がん剤の扱いには経験を積んでいるものの、人種差で思わぬ副作用が出る確率はゼロではありません。
また、薬量を減らしたことにより効果が出ない可能性もありえます。
このような「リスク」を納得の上で治療を受けているのであり「身体に負担のないもの」と誤解されるのは危険なことです。
次に、日本できちんと未承認抗がん剤を使用してくれる病院・医師はほとんどありません。
したがって「どのような病院に伺えばよいか」と聞かれれば、ほとんど存在しないとしか答えようがありません。
また、存在するとしても、一長一短があります。
ですから、「どのような病院」ということについて、有意義な答えを得ようとするならば、例えば、次のようなことを整理されることが必要です。
(1) 前述したようなリスクをきちんと許容するのか。
(2) 地理的範囲はどこまで許容されるのか(極端にいえば、欧米まで行けば何でも出来ますが、それは無理でしょう)
(3) 現在の病院・主治医のスタンスは?(例えば、「他の病院で抗がん剤治療を受けるのはどうぞ。経過観察とか緊急時対応はします」なのか「他で治療を受けるなら、後は一切面倒は見ない」など)
(4) 経済的な負担はどの程度までOKか。
極端なことを言えば、サンドスタチンはカルチノイドによる内分泌症状があるならば(あることにしてもらえれば)、立派な保険適用医療です。
RAD001は経口薬ですから、病院・医師と無関係に個人輸入して服用することもできます。
もちろん、これは危険なことですからお勧めすることではありません。
(1)~(4)が整理できれば、もう少し実現性のあるいくつかの案は出来ると思います。
ということで、整理ができましたら、よろしければメール(プロフィール欄にアドレスを載せてあります)をいただければ幸いです。
(具体的な名前などオープンには書きにくいことも出てくるでしょうから)
投稿: 粘る稀ながん患者 | 2009年6月 3日 (水) 10時50分
初めまして。
コメントではなく質問があり投稿いたしました。
Temodar+Avastinについてです。
その後の効果はいかがでしょうか?
個人差がある事は承知の上で質問させてください。
また、副作用はどのような、そしてその程度でしょうか?
失礼な質問で済みません。
現在、仕事上、海外に住んでおります。
小生は神経内分泌腫瘍・カルチノイドと診断され3年8ヶ月経過です。
部位は膵臓と肝臓となります。
日本にいた時から現在まで、積極的治療は殆ど行っておりませんでしたが、腫瘍の増大が起こり投薬治療を決心しようと考えております。
治療法としてピックアップされたのは併用治療です。
経口薬がTemodar, Everolimus
医療用語は分かりませんが、静脈点滴タイプが、Avastin, Interferon
皮下注射が、Oktreotide, Interferon
その中で、お勧めがTemodarとAvastinの併用でした。
色々、自分で調べた上で再度話し合う事になっております。
調べている中で、貴殿のHPに出会い投稿させていただいた次第です。
以下は経緯となります。
2006年1月、急性膵炎にて入院中、CT検査で肝臓に腫瘍が発見される。(血液検査はすべて正常)
その後、T医科歯科大学病院に移り検査するも同判断のため(悪性)同年5月に腹腔鏡術により切除。
細胞検査の結果、高分化の肝内分泌腫瘍と判断され特段心配ないとの事でした。
同年12月、CT検査の結果、膵臓1箇所、肝臓8箇所に腫瘍が発見され余命1年と宣告される。
2007年2月、オクトレオチドを使用したCT検査をし、さらに細胞を再検査も幸いにしてホルモン分泌は一切無く、オクトレオチドとインターフェロン併用を進められるも副作用が怖いのと奏効率が非常に低いので冒険はせず観察を選択。
認可薬となると極めて少なく効果も低いと言われ、特に肝臓となると更に症例が少なく効果がほとんど期待できないかもしれないが治療をする事をすすめられるも断念。
さらにレアな腫瘍なので絶対に自分は1年では死なないと変な自信だけあり経過観察をいたしました。
しかし、当時の担当医から、せめてTS-1だけでもと進められ一週間試すも手の色が変色してしまい中断。
その後、2006年12月の状態のままキープしていた腫瘍が2008年3月CTで急激な増大(対比2007年12月CT)が認められ同年5月に肝動脈塞栓術を行うも、殆ど流れ出てしまい2箇所の腫瘍のみ効果ありの結果でした。
同年9月から海外転勤となり細胞癌専門医(特にカルチノイド・神経内分泌腫瘍の専門)のもと、経過観察してきましたが、今年の8月CT(3月対比)でさらに増大が認められ本日に至っております。
現在の状態を理解し認めつつ、さらに増大したことで次の覚悟(初めての本格的な治療をするに際し)を自分の中で整理しております。
心配後とは一つ、治療することでの効果と日常生活です。
残される妻と子供2人(小学生と園児)のために生きている限りギリギリまで仕事をし生活を維持すると共に、その後の資金を蓄えたいと思っております。
以上となります。
早期の段階で覚悟を決め治療をしてきた貴殿のHPを拝見し、自分は楽観して非常に中途半端に向き合ってきたと感じております。
投稿: こばちゃん | 2009年9月10日 (木) 16時13分
こばちゃん さま
まずは、ブログの「治療歴」と「膵内分泌細胞がん」の記事をすべてきちんとお読み下さい。
必要な情報のかなりのことが書いてあると思います。
次に、「きちんと」現実を把握下さい。
書かれている内容からは、極めてきちんとした医師が主治医になっているようですので、
1.無治療の場合の半年/一年/三年先まで生きていられるおおよその確率
2.治療した場合の一年/三年/五年先まで生きていられる確率
を確認されるべきだと思います。
私に言わせると、あなたの考えは、現在ですら「甘い」というより「傲慢」としかみえません。
少なくとも、私のブログをきちんと読んでいれば、「「早期」の段階で覚悟を決め」などという言葉はでないはずです。
なお気になりますのは医療費です。
海外赴任中ということですので民間の保険を当てにされている可能性がありますが、海外転勤時には「がん」がわかっていたのですから、加入できているのが不思議です。場合によっては、告知義務違反で保険がでない可能性を心配しますが大丈夫ですか?
念のため申し上げておきますと、日本において、あなたが提案を受けているような「きちんとした」治療が受けられる可能性は万に一つよりも小さいと思います。
投稿: 粘る稀ながん患者 | 2009年9月10日 (木) 22時55分
早速のご回答ありがとうございます。
また、安易に「覚悟」などという言葉を使用してしまい誠に申し訳ありません。
ご指摘いただいた部分を拝見し、大変無礼な言葉を使用してしまったこと、お詫び申し上げます。
余命についてですが、今年の初めの診察で、こちらの主治医からは、
無治療で最大3年~5年
治療の場合、5年~未定(治療の効果によるので最大で10年ぐらいと言われていました)
ご指摘の通り「甘さ」ではなく「傲慢」でした。
現実を捉えた振りをしているだけで逃げていました。
治療の効果や副作用についても確認することが出来ました。
ありがとうございます。
ご心配いただいた保険ですが、正直、考えても見ませんでした。
現時点では不明としか言えません。
駐在は全員、当社(外資系)のグループ保険に自動加入することになっており、個人の手続きは不要で後日、カードが送られてくるだけでした。
現在までに3回、こちらでCTを受けましたが、最初に個人で負担し、その後、保険申請書を申請すると全額戻ってきていました。
突然、大変に失礼な投稿をしてしまいましたが、今後もご連絡させていただけると幸甚です。
投稿: こばちゃん | 2009年9月11日 (金) 12時42分
こばちゃん 様
コメントいただいたのに公開することを忘れてしまい、コメントのアップが遅くなり申し訳ありませんでした。
私とは異なり、かなり余裕があるようですので、じっくりと今後の暮らし方などを考えられると良いと思います。
また、余命をうかがってSutentが薬の候補に入っていないのもなんとなく頷けました。
海外ですと治療費用の問題が一番深刻(国内でも健康保険適用外抗がん剤や未承認抗がん剤を使用すれば同様のはずですが、残念なことに、そのような治療をしてくれる病院はほぼ皆無です)のはずですが、会社のグループ保険ならば関係ないのかもしれません。
今後の全体方針を考えられる前に、現時点での想定される余命の確認をされておくほうが良いかもしれません。
また、悩ましいのは、国内・国外のいずれでの治療生活(といっても、ほとんど通常の生活は可能だと思いますが)を希望されるのかということです。
はっきりといって、日本において、膵内分泌細胞がんの「まっとうな治療」は、まずもって期待できません。
といって、ご家族のことをどのように考えられるのか・・・
最終的には、ご自身のご判断というしかないのですが、非常に難しい判断になるだろうと推察します。
とりあえず
投稿: 粘る稀ながん患者 | 2009年9月14日 (月) 15時13分