休眠療法 -1-
日本の幽霊は足がないのにあちらこちらを動き回る。
同じように、意味をはっきりさせず、イメージのみで動き回る「言葉」が最近、とみに増えてきているような気がする。
もちろん、日常使用する言葉について、いちいち「定義」が求められてはやっていられないが、といって、大事な時の言葉が意味曖昧なものでは大変なことになりかねない。
医療では、同じ言葉をある医師が使うのと別の医師が使うのが別の意味であり、さらに、患者は異なる意味で理解するなどということになると命にかかわることもある。
そして、このような曖昧語を駆使して、意図した勘違いをさせるようにたくらむ日本語に熟達した(しかし、良心は未発達な)業者もいるらしい。
前置きはこれくらいにして、最近、気になっているのは「休眠療法」なる言葉である。
イメージはわかるが、その内容などについては、(少なくとも私にとっては)アイマイな部分が残る。
まずは、休眠療法のもととなる「考え方」は
・従来、とかく重視されてきた腫瘍の縮小ではなく、憎悪しないことを評価ポイントとし
・副作用を重視する
と理解している。
この考えには、諸手をあげて賛成したい。
その「結果」として、
・非憎悪ならば抗がん剤の投与量を少なくすることが可能であり、
・極めて副作用を少なくすることができる
とされているようである。
投与量が少なければ、副作用が比較的低くなることは事実であろう。
しかし、「非憎悪ならば抗がん剤の投与量を少なくすることが可能」はどの程度本当なのだろうか。
多くのがん患者が標準投与量(最大投与量)によっても、憎悪が抑えられなかったり、なんとか、変化なしを維持しているのが実情ではないだろうか。
もちろん、抗がん剤の投与を少なくできる人もいることは確かであろう。ただし、これが全てのがん患者にあてはまるとも思えない。「どの程度」本当なのだろうか。
また、投与量が少なければ、比較的副作用が低くなることは事実であろう。しかし、投与量が少なくとも副作用がでる可能性はあろうし、標準量の投与を受けても副作用が低い人もいるだろう。これも「どの程度」本当なのだろうか。
私自身のがんについて言えば、治験論文を見る限りでは、最大量投与しても、縮小する割合は低く、やっと変化なしというのが大勢のようであり、休眠療法の実現可能性に対しては「懐疑的」である。
さらに、休眠療法のほうが延命効果が高いという医師もいる。
どの程度、きちんとしたデーターに基づいているのだろうか。医師の主観というものと、客観的な臨床データー(統計データー)が異なるということもよくあるようである。まさか、単なるその医師の主観で言っているのではないだろうな。
私自身は、きちんとしたデーターをみたこともなく(データーがあるということを聞いたこともなく)、それが本当ならば嬉しいが、たいていの場合は世の中そんなに甘くはないと思っている。「真偽不明」ではあるものの「否定的」といえよう。
あなたの思っている「休眠療法」の内容をはっきりさせるために質問をしたい。もちろん、答えに正解はない。しかし、これによりあなたにとって「休眠療法」が何を意味しているか多少は明確になるかもしれない。
・もしも、「副作用に問題がない、ある投与量で腫瘍が減少した」場合、さらに、腫瘍の減少がみられなくなり変化なしになるまで投与量を減らすのか。あるいは、副作用に問題がなければ、腫瘍が減少するにしくはなしということで、その量を維持するのか。
・どのレベルの副作用を問題なしとするのか。例えば、主観的な副作用として、吐き気について「軽いむかつき」がある場合、投与量を減少させるか。客観的な副作用として、白血球減少は正常値を多少でも下回ったら不可とするのか、あるいは、通常まず影響がみられない(例えば、4000)程度ならばよしとするのか。
・さらに、上記のような条件(あなたなりの回答)で、実際に休眠療法が可能な患者は全体のどれくらいになると想像するか。
・そして、休眠療法のほうが延命効果が高いということは、(1)事実である、(2)仮説であるが正しそう/間違っていそう、(3)虚偽である。
あなたにとっての休眠療法のアイマイさが少なくなってくれれば幸いである。


粘る稀ながん患者さん、ここの医療従事者の議論が面白かったですよ。医療従事者内でも意見は分かれているようで・・
http://www.mdacc-education.jp/bbs/thread_dtl.php4?sno=133
投稿: nanoshi | 2007年2月22日 (木) 21時40分
nanoshi 様
おもしろい情報の提供ありがとうございました。
どのような場合に、どの程度効果的なのか/効果がないのかというきちんとした医学的議論はもちろん大事ですが、休眠療法という言葉というかイメージだけが一人歩きしているようにも思えます。
少なくとも、そこで使用する休眠療法とは何かということが明らかにされないと医療側にとっても、もちろん、患者にとっても不幸なことになりかねないと心配しています。
投稿: 粘る稀ながん患者 | 2007年2月22日 (木) 22時02分